『一帯一路』研究の現状 2018年4月21日 中川十郎

BIS論壇 No.255『一帯一路』研究の現状 2018年4月21日 中川十郎

2018年4月18日、東京で「日中韓3極会議」、「第143回外交円卓懇談会」、「一帯一路日本研究所・研究会」、4月20日「Super China」~中華復興の夢と課題~と題する講演会が目白押しで行われた。1月末の天津健康医療特区、自由貿易試験区、一帯一路・港湾訪問。4月中旬の西安、楊凌・農業近代化特区、自由貿易試験区など一帯一路に関連する現地を訪問したので、現場の感覚も踏まえて一帯一路に関する筆者の見解をお伝えしたい。
「日中韓3国協力事務局2018会議」では5月に東京で予定される久し振りの日中韓首脳会議に先立ち、関係者の研究成果や意見が具申された。1999年からの討議を経て2011年に設置された3国協力会議は7年を経て具体化に拍車がかかりつつある。東アジア経済協力の核となるべき日中韓がいまだにFTAも締結していないことは、21世紀のアジアの時代に問題である。ようやく日中関係も8年ぶりに経済関係閣僚会議も再開され、日中雪解けムードが高まっている。4月27日には南北朝鮮半島の首脳会議が開催される。この機会に東アジアにおいて最も重要な日中韓の経済協力が促進されることを期待したい。
国際フォーラムの外交円卓会議の講演者、米ブルキングス研究所・東アジア政策研究センター共同所長ミレヤ・ソリース氏はアジアの時代に米国トランプ大統領がTPPから脱退したことは問題だとして批判した。しかし、日本の安倍政権の期待に反し、今後2年間はトランプ政権はTPPに復帰することはなく、二国間のFTA交渉に注力するだろうと予測した。4月17~18日の安倍~トランプ首脳会談でも、トランプ大統領は米国がTPPに回帰することは考えていない。二国間FTA交渉に注力すると発言。日本側の甘いWishful Thinkingは無視された感じだ。18日の「一帯一路日本研究所」会議では、各発表者とも日本の一帯一路への参画を希望するとの発言が多数を占めた。
20日の科学技術振興機構主催の中国改革開放40周年、日中平和条約締結40周年記念講演会「Super China」~中華復興の夢と課題~で、立命館大学政策科学部の周 偉生教授がこれまでの長年の研究成果を基に一帯一路の歴史と将来展望について講演された。ユーラシアの9000キロにまたがる東側のアジア経済圏と西側の欧州経済圏を結ぶ一帯一路は人口40億人を擁し、最も成長力のある経済ベルトである。新シルクロードには豊富な自然資源、鉱物資源、エネルギ‐資源、土地資源と観光資源があり、21世紀のエネルギー資源の戦略基地である。交通、通信、紡績、食品、化学工業、農産品加工、消費材生産、機械製造業分野に於ける金融投資面での協力。さらに農業、砂漠化防止、エネルギ―、環境保全面などでの幅広い協力が求められると力説された。筆者も全く同感である。
筆者は陸海のシルクロードに加え、金額で国際貿易の30%を占める航空輸送、すなはち「空のシルクロード」の構築にも注力すべきだと力説してきた。幸い5月23~25日に北京で「2018 中国・欧州航空サミット」が開催され、中国と欧州の「一帯一路」航空輸送面での協力強化策などが討議される。その成果を期待したい。日本も遅れることなく、一帯一路とあわせ、投資銀行AIIBにも参加すべく真剣に検討することが切望される次第だ。

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