西安・楊凌訪問記」 2018年4月16日 中川十郎

BIS論壇 No.253「西安・楊凌訪問記」2018年4月16日 中川十郎

最近、世界的に脚光を浴びている中国の広域経済圏構想「一帯一路」の西の拠点、西安と農業近代化国家プロジェクト特区の現場「楊凌」を4月12日~15日、訪問した。今回の訪問団メンバーは筆者のほかに、劉 鋒・BIS国際理事、伊藤 正・BIS理事、事務局長、松井武久・日本シニア企業支援機構代表理事、協同組合アジア総合技術協力会・小林柏松代表理事の5名であった。筆者にとっては2008年10月以来、10年ぶりの訪問であった。
西安、楊凌ともに高層建築群が林立し、中國の発展ぶりに驚いた。中國は2025年を目標に「中国製造2025」戦略の下、米国やドイツに匹敵するため、ICT, Big Data, AI,ロボット、ドローンなどの活用による世界の製造大国を目指している。この意欲的な戦略は実現するだろうと実感させられた今回の中国訪問であった。
楊凌・農業近代化特区戦略は2013年に習近平・国家主席が打ち出した世界戦略「一帯一路」構想の下、西の拠点として、中央アジア、東欧、中東、アフリカなどとの農業開発共同プロジェクトが急速に動きだしている。滞在したホテルの食堂でも中央アジア、中東、東欧、アフリカからの農業関係者が多くみられた。
農業近代化特区には米国、カナダ、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、豪州なども参加している。特に米国ネブラスカ大学の大規模散水プロジェクト、中央アジアの雄、カザフスタンとは砂漠、乾燥農場近代化農業プロジェクトが進行中で、政府首脳、農業研修生の往来が頻繁に行われている。日中関係は尖閣島事件以来、経済交流が停滞し、日中の農業協力も中断。中國から欧米への近代農業研修プロジェクト先から日本は疎外されている。今回の訪問で、楊凌農業関係者へ働きかけた結果、20名の研修生派遣の候補地の一つに日本を検討いただけることになったのはBISミッションの成果の一つである。BISは日本シニア起業支援機構(J-SCORE)と共同で楊凌農業特区との提携協力覚書を交換し、今後、楊凌との関係強化に尽力することにした。幸い4月15~16日には、王・中国外相を中心とした日中経済関係閣僚会議が東京で8年ぶりに開催される。今年は日中外交関係回復40周年の記念すべき重要な年である。「一帯一路」、「AIIB(アジア・インフラ投資銀行)」を含め、楊凌農業近代化プロジェクトなどへの参加が遅れれば、日本は中國側に相手にされなくなることを危惧する次第である。日本は1400年前の隋、唐の時代から300年間、遣隋使、遣唐使を23回にわたり派遣。当時の先進国・中國の先端技術、文化、知識、医術、ミカン、茶、薬、仏教の経典などの導入を行った。700年代の奈良の平城京、京都の平安京の建設や、国の仕組み、法律なども手本にした。世界第2のGDPを誇る中国は2025年までには米国に肉薄すると見られている。中國との政治・経済関係を早急に改善しなければ、欧米勢に大きく出遅れる危険性があることを痛感した。4月14日の会議後、有名な秦の始皇帝の兵馬俑を訪問し、その巨大さに驚いた。2200年後の「一帯一路」構想は始皇帝の万里の長城、大運河建設にも比肩する21世紀の巨大プロジェクトである。このプロジェクトに参加することが、日本の未来にとって肝要だと痛感した今回の西安、楊凌訪問であった。

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