「アジアの文化新時代」2018年4月30日 中川十郎

BIS論壇 No.256 「アジアの文化新時代」 2018年4月30日 中川十郎

 去る4月21日、地球システム倫理学会総会が麗澤大学東京センターで開催された。総会記念講演者として旧知の青木 保・国立新美術館長、元文化庁長官が記念講演されるというので参加した。「アジアに文化の新時代―文化交流と文化融合」と題した講演は有益かつ興味あるものであった。
中東のアブダビはフランスのルーブル美術館と提携し、古代から現代美術、前衛美術の展示を行ており、ニューヨークのグッゲンハイム美術館などとの提携も模索している。アブダビが中東の学術拠点として急浮上しつつあるとの話に驚愕と共に感銘を受けた。アジアにおいてもシンガポールが現代美術館や劇場、オペラハウスなどの建設。北京が国家大劇場、地下オペラハウスの建設などに注力している。タイでも現代美術館の建設に積極的である。北京ではコンピューター博物館の建設を模索中である。一方、韓国は「冬のソナタ」以来、東南アジアへの文化交流を積極化しており、日本の出遅れが否めない。日本の文化庁は文化省に格上げし、文化交流を積極化すべきであるとの意見には筆者も同感である。

  4月12~15日、西安、楊凌一帯一路農業特区を訪問の際、14日、会議後に秦の始皇帝の兵馬俑を訪問した。西安から兵馬俑まで片道4車線の高速道が完成したことより、西安から兵馬俑までは30~40分で訪問できるようになった。当日は土曜でもあったが、内外の観光客の訪問者で一杯であった。中國でも経済発展につれて国内外於ける文化活動も活発である。孔子学院は今日世界で1000以上が活動し、中國の文化、語学の普及に全力を注いでいる。日本でも20校以上が開講している。

 かって日本製品は品質の良さと価格競争力もあり、”Made in Japan” 製品は世界を席巻した。しかし、今は中国製品や韓国、東南アジア製品に抑えられている。日本製品の競争優位を確保するためには日本製品に日本文化を融合し、競争力を高めることが必須の時代となっている。日本の文化力を喧伝することが製品やプロジェクト、インフラ売り込みに重要な競争優位の武器と成っている。日本の輸出力はつまるところ日本の文化力如何だといっても過言ではないだろう。21世紀の日本の輸出の先兵は文化力にかかっている。

 ブルノタウトは「桂離宮」に日本美を見出し、ルース・ベネデイクトは「菊と刀」で日本文化の神髄を世界に広めた。岡倉天心は「茶の本」で、新渡戸稲造は「武士道」で、鈴木大拙は「禅」で日本文化を世界に発信した。今後、日本は製品のハードに日本文化のソフトを融合させて世界に紹介することが必要である。あわせ、医療観光や観光促進、ソフト、サービス、ファッシヨン、映像、アニメ、AI, などの世界への紹介が日本製品やプエロジェクト、インフラ輸出などにも影響を与えることを認識し、日本文化の世界への紹介に全力を傾注することが望まれることを痛感した青木館長の講演であった。 

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