「一帯一路その他近況」2018年5月20日 中川十郎

BIS論壇 No. 257 「一帯一路その他近況」2018年5月20日 中川十郎

 5月7日、JETROの広東省説明会に参加。10日 同じくJETROのベラルーシ説明会、さらに同日、政策研究大学院でのノルウエー外務大臣(前国防大臣)の同国外交政策、北極海を中心とする対応などについての講演会に参加した。14日にはインドネシア大使と再生可能エネルギ―を中心とする協力案件につき前向きな話合いができた。そのあとJETROアジア経済研究所のアジア経済展望セミナーに参加。16日はJETROでの太平洋島礁諸国の現状説明会。19~20日は日本貿易学会年次大会に久し振りに参加。得るところ大なるものがあった。
 広東省の説明会では日本との協力強化の熱意が見られた。一帯一路について関係者に質問したが期待したほどの反応はなかった。海のシルクロードの出発点は福建省の福州でそれほど関心はないのだろうと判断した。
 
 ベラルーシは医療、ICT, ハイテクなどの分野で想像以上に進んでおり、日本の武田など製薬会社が提携してがん予防薬、多発性骨髄腫治療薬など先端医薬の製造販売を注力している。さらにVMS Solutionの監視カメラ・ソフト開発で日本のFujitsu、パナソニックなども提携を強化。また Video Real Time 技術を、Smart City 構築に活用している。この技術は中国にも輸出商談をしているとのことだった。
 一方、日本の中堅企業の東新工業はパイプの Joint加工でベラルーシのBelarus Steel Works と合弁で製造販売を行っている。有名なミンスクを中心に小国ながらベラルーシは技術レベルで断トツの技術と実績を持つのでハイテク技術分野での協力強化が望ましいと痛感した。ベラルーシはロシア、カザフスタン、キリギス、アルメニアなどと組み、ユーラシア経済連合(EEU)を結成。上海協力機構(SCO)と共に中国主導の「一帯一路」の有力な基盤を形成している。今後日本としてもベラルーシの技術力のみならず、地政学的観点からもベラルーシを重視すべきだと痛感した。

 1月末、中國が初の「北極海白書」を発表した。中國は陸と海、空の一帯一路に加え、第4の新物流網として、運航が始まっている北極海航路の活用の研究も始めているようである。
8月には北極海ヤマル半島から通年のlNG運行も始まると見られている。これが実現すると北極海航路はスエズ運河経由に比べ航海日数も大幅に削減され、物流革命がもたらされることになる。この点に関して、前記のノルウエー外務大臣に質問したところ、北極海協議会連盟の有力メンバーであるノルウエーは北極海の環境保全の面からも中国の動きを十分注意しながらWatchするとの発言があった。
 太平洋島礁国説明会で講師の南太平洋大学の准教授には安倍政権の「インド・太平洋戦略」について質問した。同准教授によると日本が提唱しているこの構想は太平洋島礁国にはほとんど打診がなく、日本が一方的に推進しているのではないかと批判的な発言があった。日本は関係国のコンセンサスを得ながら外交交渉をすることが肝要ではないか。

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